はじめに
法定休日の夜から勤務を開始し、そのまま翌日の朝まで働いた場合、給与計算ではどのように扱えばよいのでしょうか。
たとえば、次のようなケースです。
・法定休日の日曜日22:00から勤務開始
・翌日の月曜日9:00まで勤務
・途中で休憩1時間
・実労働時間は10時間
このような勤務では、「10時間働いたから、8時間を超えた2時間は時間外労働」と単純に考えると、給与計算を誤る可能性があります。
日をまたぐ勤務では、次の区分を分けて考える必要があります。
・法定休日労働
・深夜労働
・翌日0:00以降の労働
・時間外労働
・36協定上の時間管理
この記事では、「2暦日にまたがる労働」のうち、法定休日から勤務を開始した場合の考え方を、できるだけわかりやすく解説します。
結論
法定休日から勤務を開始して翌日にまたがる場合は、「休日割増」と「時間外割増」を分けて考える必要があります。
ポイントは次のとおりです。
・法定休日は、原則として午前0時から24時までの暦日で判断します。
・法定休日の24:00までに働いた時間は、法定休日労働として扱います。
・翌日0:00以降は、翌日が法定休日でなければ、原則として法定休日割増35%以上の対象にはなりません。
・ただし、2暦日にまたがる継続勤務については、1日8時間を超える時間外労働の算定上、勤務開始日の労働として通算して確認します。
・22:00から翌5:00までの労働には、深夜割増25%以上の確認が必要です。
・法定休日労働と深夜労働の割増は重複します。
・法定休日労働と時間外労働の割増は、同じ時間について原則として重複しません。
つまり、午前0時を過ぎたからといって、すべての労働時間が完全にリセットされるわけではありません。
法定休日割増は暦日で確認し、時間外割増は継続勤務として通算確認する、という整理が必要です。
法定休日とは
法定休日とは、労働基準法で使用者に義務付けられている休日です。
労働基準法では、原則として、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません。
ただし、4週間を通じて4日以上の休日を与える方法も認められています。
ここで注意が必要なのは、会社の休日がすべて法定休日になるわけではないという点です。
たとえば、土日休みの会社であっても、労働基準法上の法定休日は、そのうち1日です。
もう1日は、一般的に「所定休日」または「法定外休日」として整理されます。
そのため、休日労働の割増賃金を判断するときは、まず次の点を確認する必要があります。
・その日は法定休日なのか
・会社の所定休日なのか
・就業規則で法定休日を特定しているか
・36協定で休日労働を予定しているか
法定休日は原則として暦日で考える
法定休日は、原則として暦日で考えます。
暦日とは、午前0時から24時までの1日のことです。
たとえば、日曜日が法定休日であれば、日曜日0:00から日曜日24:00までが法定休日です。
したがって、日曜日の22:00から勤務を開始した場合、日曜日22:00から24:00までの労働は法定休日労働になります。
一方で、日曜日24:00を過ぎて月曜日0:00になった後は、月曜日が法定休日でない限り、原則として法定休日労働ではありません。
ここが、日をまたぐ勤務で最も誤解されやすい部分です。
具体例:日曜日22:00から月曜日9:00まで勤務した場合
次のケースで考えます。
・法定休日:日曜日
・翌日月曜日:通常の労働日
・勤務時間:日曜日22:00から月曜日9:00まで
・休憩時間:1時間
・実労働時間:10時間
この場合、時間帯ごとに分けて整理します。
日曜日22:00から24:00まで
この時間帯は、日曜日の法定休日内の労働です。
また、22:00以降であるため、深夜労働にも該当します。
したがって、この時間帯は次の割増賃金を確認します。
・法定休日労働の割増
・深夜労働の割増
法定休日労働の割増率は35%以上です。
深夜労働の割増率は25%以上です。
そのため、法定休日の22:00から24:00まで働いた場合は、法定休日割増と深夜割増を合わせて確認する必要があります。
月曜日0:00から5:00まで
この時間帯は、日曜日の法定休日ではなく、月曜日の労働として考えます。
ただし、0:00から5:00までは深夜時間帯です。
そのため、月曜日0:00から5:00までの労働については、深夜割増の確認が必要です。
月曜日5:00から9:00まで
この時間帯は、深夜時間帯ではありません。
月曜日が通常の労働日であれば、通常労働として扱うか、または月曜日の労働時間の状況によって時間外労働として扱うかを確認します。
たとえば、月曜日にその後も通常勤務が予定されている場合は、1日8時間を超えるかどうかを確認する必要があります。
また、1週間の労働時間が40時間を超える場合も、時間外労働の確認が必要です。
法定休日に8時間を超えて働いた場合、時間外割増も必要か
法定休日労働については、8時間を超えて働いたとしても、法定休日労働と時間外労働の割増は原則として重複しません。
つまり、法定休日に10時間働いたからといって、8時間を超えた2時間について、休日割増に加えて時間外割増を重ねて支払うという考え方にはなりません。
法定休日労働については、法定休日割増35%以上で整理します。
ただし、深夜時間帯に働いた場合は、深夜割増25%以上が別に必要です。
たとえば、法定休日の22:00から24:00まで働いた場合は、次のように整理します。
・法定休日労働:35%以上
・深夜労働:25%以上
・合計:60%以上の割増
このように、法定休日労働と時間外労働の割増は重複しませんが、法定休日労働と深夜労働の割増は重複します。
午前0時で何が変わるのか
日をまたぐ勤務では、午前0時で次の点が変わります。
1. 法定休日かどうかの判断が変わる
日曜日が法定休日であれば、日曜日24:00までは法定休日です。
しかし、月曜日0:00以降は、月曜日が法定休日でない限り、原則として法定休日ではありません。
2. 深夜割増は午前0時で終わらない
深夜労働は22:00から翌5:00までの労働です。
そのため、月曜日0:00から5:00までの労働についても、深夜割増の確認が必要です。
3. 時間外労働は継続勤務として確認する
月曜日0:00以降の労働は、月曜日が法定休日でなければ、原則として法定休日割増35%以上の対象にはなりません。
ただし、2暦日にまたがる継続勤務については、1日8時間を超える時間外労働の算定上、勤務開始日の労働として通算して確認します。
そのため、午前0時を過ぎたからといって、労働時間が完全にリセットされるわけではありません。
法定休日割増は暦日で確認し、時間外割増は継続勤務として確認する、という整理が必要です。
実務で確認すべきポイント
法定休日から翌日にまたがる勤務がある場合は、次の点を確認してください。
・就業規則で法定休日を特定しているか
・法定休日と所定休日を区別しているか
・36協定で休日労働を予定しているか
・36協定の休日労働日数や時間数の範囲内か
・勤怠システムで法定休日と所定休日が正しく設定されているか
・日をまたぐ勤務の0:00以降が正しく集計されているか
・深夜時間帯が22:00から翌5:00で設定されているか
・休憩時間を実際に取得した時間帯で控除しているか
・翌日の所定労働時間と重なる場合の扱いを確認しているか
・週40時間を超える時間外労働を確認しているか
・給与明細上、休日手当、深夜手当、時間外手当の内訳を説明できるか
特に、勤怠システムや給与計算ソフトを使用している場合でも、設定が誤っていれば正しい計算にはなりません。
自動計算されているから大丈夫と考えず、法定休日、所定休日、深夜時間帯、日をまたぐ勤務の設定を確認することが重要です。
給与計算で起こりやすいミス
日をまたぐ勤務では、次のようなミスが起こりやすくなります。
・法定休日ではない日に休日割増35%以上を付けてしまう
・法定休日なのに所定休日として処理してしまう
・深夜割増を付け忘れる
・0:00以降も休日割増を継続してしまう
・休憩時間をどの時間帯から控除したか不明になる
・週40時間超過の確認をしていない
・36協定上の休日労働時間と給与計算上の休日労働時間が一致していない
法定休日の夜から翌朝まで勤務するケースでは、法定休日労働、深夜労働、翌日の労働が重なります。
そのため、給与計算だけでなく、勤怠管理、36協定、就業規則の確認も必要です。
よくある質問
Q1. 法定休日の夜から翌朝まで働いた場合、翌朝まで休日労働になりますか?
A. 原則として、翌朝まで自動的に休日労働になるわけではありません。
法定休日労働は、原則として午前0時から24時までの暦日で判断します。
そのため、日曜日が法定休日であれば、日曜日24:00までが法定休日労働です。
月曜日0:00以降は、月曜日が法定休日でない限り、原則として法定休日労働ではありません。
Q2. 法定休日に8時間を超えて働いた場合、時間外割増も必要ですか?
A. 法定休日労働については、8時間を超えて働いても、休日割増と時間外割増は原則として重複しません。
ただし、22:00から翌5:00までの深夜時間帯に働いた場合は、深夜割増を別に確認する必要があります。
Q3. 午前0時を過ぎたら、深夜割増は不要になりますか?
A. 不要にはなりません。
深夜労働は22:00から翌5:00までの労働です。
そのため、午前0時を過ぎても、5:00までの労働については深夜割増の確認が必要です。
Q4. 土曜日に出勤した場合も、休日割増35%以上が必要ですか?
A. 土曜日が会社の休日であっても、労働基準法上の法定休日とは限りません。
土曜日が所定休日であり、法定休日ではない場合は、休日割増35%以上ではなく、時間外労働や会社の賃金規程に基づいて判断することになります。
Q5. 休憩1時間はどこで控除すればよいですか?
A. 休憩時間は、実際に取得した時間帯で控除する必要があります。
たとえば、休憩を日曜日22:00から24:00までの間に取得したのか、月曜日0:00以降に取得したのかによって、割増賃金の計算に影響する場合があります。
そのため、日をまたぐ勤務では、休憩時間の取得時間帯も記録しておくことが重要です。
Q6. 勤怠システムで自動計算されていれば問題ありませんか?
A. 自動計算されていても、設定が誤っていれば正しい給与計算にはなりません。
特に、法定休日、所定休日、深夜時間帯、日をまたぐ勤務の集計方法について、設定内容を確認する必要があります。
Q7. 午前0時を過ぎると、労働時間はリセットされますか?
A. 完全にリセットされるわけではありません。
法定休日割増35%以上については、法定休日の暦日である0:00から24:00までを基準に確認します。
一方で、2暦日にまたがる継続勤務については、1日8時間を超える時間外労働の算定上、勤務開始日の労働として通算して確認します。
そのため、日をまたぐ勤務では、法定休日割増、深夜割増、時間外割増を分けて整理する必要があります。
まとめ
重要なポイントは次のとおりです。
・法定休日労働は、原則として午前0時から24時までの暦日で判断します。
・法定休日の24:00までに働いた時間は、法定休日労働です。
・翌日0:00以降は、翌日が法定休日でなければ、原則として法定休日割増35%以上の対象にはなりません。
・ただし、2暦日にまたがる継続勤務については、1日8時間を超える時間外労働の算定上、勤務開始日の労働として通算して確認します。
・22:00から翌5:00までの労働には、深夜割増25%以上が必要です。
・法定休日労働と時間外労働の割増は、同じ時間について原則として重複しません。
・ただし、法定休日労働と深夜労働の割増は重複します。
日をまたぐ勤務では、法定休日割増、深夜割増、時間外割増を分けて判断する必要があります。
