- パートやアルバイトを採用するとき、事業主が迷いやすいのが雇用保険に加入させる必要があるかどうかです。
- 正社員だけが対象と思われがちですが、実際には短時間労働者やシフト制の労働者でも、要件を満たせば雇用保険の加入対象になります。
- 特に、毎週の勤務時間が固定されていない事業所では、加入判断を誤りやすく、届出漏れが後から問題になることもあります。
- そこで今回は、雇用保険の加入条件、手続き、保険料、実務上の注意点を、事例を交えてわかりやすく整理します。
雇用保険とは
- 雇用保険は、失業したときの給付だけでなく、育児休業給付や教育訓練給付などにも関わる重要な制度です。
- そのため、加入の有無は「保険に入るかどうか」だけの問題ではなく、労働者が将来受けられる給付に直結する実務判断になります。
- 事業主としては、採用時点で加入対象かどうかを整理し、必要な届出を期限内に行うことが重要です。
雇用保険の加入条件
1. 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用保険の加入判断では、まず1週間の所定労働時間を確認します。
- ここでいう所定労働時間は、原則として雇用契約書や就業規則で定めた時間です。
- たとえば、
- 1日5時間
- 週4日勤務
であれば、週20時間となります。
- この場合、他の要件も満たせば加入対象です。
2. 31日以上の雇用見込みがあること
- もう1つの基本条件が、31日以上継続して雇用される見込みがあることです。
- たとえば、
- 契約期間が2か月
- 契約更新の可能性がある
- これまでも同様の契約を更新してきた
という場合は、加入対象になる可能性が高いです。
- 逆に、31日未満で終了することが明確であれば、加入対象外になることがあります。
シフト制はどう判断するのか
- 実務で特に迷いやすいのが、シフト制で毎週の勤務時間が固定されていないケースです。
-
このような場合、月87時間以上が実務上の目安として扱われることがあります。
- ただし、この「月87時間」は、法律の条文にそのまま書かれた数値というより、加入判断の実務上の目安として理解するのが適切です。
- そのため、実際には次の資料を総合して判断する必要があります。
- 雇用契約書
- 採用時の説明内容
- シフト表
- 実際の勤務実績
実務上の見方
- 毎週の勤務時間が一定でなくても、
- 月の勤務見込みが安定して87時間以上ある
- その状態が継続する見込みがある
のであれば、加入対象として検討する必要があります。
- 「シフト制だから加入不要」と考えるのは危険です。
事業主が行う手続き
入社時
- 加入対象となる場合は、雇用保険被保険者資格取得届を提出します。
- 提出先は、管轄ハローワークです。
-
提出期限は、原則として被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。
- 実務では、次の情報確認が必要になります。
- 氏名
- マイナンバー
- 雇用保険被保険者番号
- 所定労働時間
- 雇用期間
退職時
- 退職したときは、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要です。
- さらに、退職者が失業等給付を受ける可能性がある場合は、離職票関係の手続きも問題になります。
- 手続き漏れがあると、本人の給付に影響するため注意が必要です。
保険料の考え方
-
2026年度(令和8年度)の一般の事業の保険料率として、次の数値で整理されています。
- 労働者負担:5/1000(0.5%)
- 事業主負担:8.5/1000(0.85%)
- 合計:13.5/1000
- つまり、一般の事業では、労働者と事業主の双方が保険料を負担します。
- なお、業種によって料率が異なるため、最終確認は必須です。
計算例
- 月給200,000円の場合
- 労働者負担
200,000円 × 0.5% = 1,000円
- 給与計算を行う際は、雇用保険の加入要否だけでなく、保険料控除の有無まで連動して確認する必要があります。
事例でわかる加入判断
事例1 飲食店のパート
- 契約内容
- 計算すると、週16時間です。
- この場合、現行の考え方では原則として加入対象外です。
- ただし、将来の制度改正を見据えると、短時間労働者の管理は早めに整理しておく方が安全です。
事例2 アルバイトで2か月契約
- 契約内容
- この場合は、
- 週20時間以上
- 31日以上の雇用見込みあり
となるため、加入対象となる可能性が高いです。
事例3 シフト制の受付スタッフ
- 契約書には勤務日を固定せず「シフトによる」と記載
- 直近1か月の勤務実績は90時間
- 今後も同程度の勤務が続く見込み
-
このような場合は、月87時間の目安を超えているため、加入対象として検討する場面です。
- 実務では、契約と実績の両方を確認したうえで判断します。
よくある誤解
パート・アルバイトだから加入しなくてよい
- そのようには言えません。
- 雇用保険は、雇用形態の名称ではなく、労働条件と雇用見込みで判断します。
本人が入りたくないと言っている
- 本人の意思だけで加入の有無を決めることはできません。
- 要件を満たす場合は、原則として加入対象です。
一時的に勤務時間が減ったからすぐ喪失する
- 一時的な減少だけで直ちに資格喪失になるとは限りません。
- ただし、恒常的に所定労働時間が基準を下回る見込みになった場合は、資格喪失の検討が必要です。
学生は全員加入しない
- これも一律には言えません。
- 昼間学生は原則として適用除外ですが、例外的に加入対象となる場合もあるため、個別確認が必要です。
事業主向けチェックリスト
- 入社時に、雇用契約書へ所定労働時間を明記しているか
-
31日以上の雇用見込みがあるか
- シフト制の場合、月87時間以上の勤務見込みがあるか
-
雇用保険被保険者資格取得届を期限内に提出したか
- マイナンバー、被保険者番号などの必要情報を回収したか
- 実際の勤怠が契約内容から大きくずれていないか
- 退職時の資格喪失届や離職票関係の処理漏れがないか
今後の制度見直しにも注意が必要です
- 雇用保険は、今後、短時間労働者への適用が広がる方向で見直しが予定されています。
- そのため、現在は加入対象外となっているパート・アルバイトであっても、将来は加入が必要になる可能性があります。
- 事業主としては、制度改正が始まってから対応するのではなく、今のうちから準備を進めておくことが大切です。
- 具体的には、週10時間以上20時間未満の従業員の把握、雇用契約書の見直し、就業規則の整備、勤怠管理の精度向上、加入判定ルールの明文化などを進めておくと、改正後の対応がスムーズになります。
まとめ
- 雇用保険の加入判断は、まず
-
週の所定労働時間が20時間以上か
-
31日以上の雇用見込みがあるか
を確認することが基本です。
-
シフト制で毎週の勤務時間が定まっていない場合は、月87時間以上が実務上の目安になることがあります。
- 事業主は、加入対象者について雇用保険被保険者資格取得届を期限内に提出する必要があります。
- 判断を誤ると、後から加入漏れや給付トラブルにつながるため、雇用契約書・シフト表・勤怠実績をそろえて確認することが重要です。
- 判断に迷う場合は、管轄ハローワークまたは社会保険労務士へ確認するのが安全です。