まず最初に
在職老齢年金の基準は、令和4年4月改正により 60歳以上は65万円基準へ一本化 されています。
令和8年4月は「制度の新設」ではなく、支給停止調整額の見直し時期 です。
本記事では、現在適用される65万円基準を前提に、65歳定年直前の賞与がどう影響するのかを整理します。
1.制度の前提
■ 根拠法令
厚生年金保険法第46条(在職老齢年金)
働きながら老齢厚生年金を受給する場合、賃金と年金の合計が一定額を超えると年金の一部が停止される制度です。
※老齢基礎年金は対象外
2.令和8年4月以降の基準
■ 支給停止調整額
65万円
(令和8年=2026年4月1日適用)
3.停止判定の計算構造
判定は次の合計で行います。
① 基本月額
老齢厚生年金の月額
② 総報酬月額相当額
内訳:
標準報酬月額
+
直近1年間の標準賞与額 ÷ 12
▶ 重要ポイント
賞与は月額換算で算入されます。
「一時金だから関係ない」は誤りです。
4.停止額の計算式
(①+②−65万円)÷2
※マイナスの場合は停止なし
5.65歳直前の賞与は影響するか
■ 原則
65歳到達前であっても、
✔ 直近1年間に支給された賞与
✔ 標準賞与額として算定済み
であれば、👉 月額換算で停止判定に含まれます。
6.65歳で定年退職する場合
ここが重要な分岐点です。
■ 65歳で完全退職(資格喪失)
✔ 厚生年金被保険者でなくなる
✔ 標準報酬月額がなくなる
👉 その後は在職老齢年金の調整対象外
ただし注意
退職前1年間に支給された賞与が
✔ 在職中支給
✔ 標準賞与額算定済
であれば、算定対象期間に含まれる可能性があります。
7.再雇用の場合
65歳で一旦退職しても、
✔ 翌日再雇用
✔ 厚生年金加入継続
の場合は、👉 引き続き在職老齢年金の対象
8.老齢基礎年金との違い
✔ 老齢基礎年金は停止対象外
✔ 調整対象は老齢厚生年金のみ
9.具体例
年金月額:12万円
標準報酬月額:48万円
直近1年間賞与:120万円
賞与月額換算
120万円 ÷ 12 = 10万円
総報酬月額相当額
48万円+10万円=58万円
合計
12万円+58万円=70万円
超過分
70万円−65万円=5万円
停止額
5万円 ÷ 2 = 2万5,000円
👉 月2万5,000円停止
10.実務で確認すべき事項
□ 65歳到達日
□ 退職日
□ 厚生年金資格喪失日
□ 賞与支給日
□ 標準賞与額算定期間
□ 再雇用の有無
11.誤解が多いポイント
❌ 「65歳で定年なら必ず影響なし」
→ 在職中の賞与は要確認
❌ 「賞与は一時金だから関係ない」
→ 月額換算で算入
❌ 「基礎年金も止まる」
→ 止まりません
12.結論
✔ 令和8年4月以降の基準は65万円
✔ 賞与は直近1年間を月額換算
✔ 65歳で完全退職すればその後は調整対象外
✔ 再雇用なら継続して対象
13.定年前後は「制度理解の差」が金額差になります
在職老齢年金は、
-
年金月額
-
標準報酬月額
-
標準賞与額
-
65歳到達日
-
退職日と資格喪失日
-
再雇用の有無
これらが複雑に絡みます。
「たぶん大丈夫」
「去年と同じだから問題ない」
という感覚判断が、
年間数十万円の差を生むことがあります。
こんな方は必ず事前試算を
□ 65歳前後で退職時期を検討している
□ 直近1年間に賞与を受給している
□ 再雇用の条件がまだ確定していない
□ 役員報酬を見直す予定がある
□ 年金見込額を正確に把握していない
一つでも該当する場合は、停止額の事前確認が必要です。
年金相談で確認すること
当事務所では、次の順で整理します。
1.年金見込額の確認
2.報酬・賞与の整理
3.在職老齢年金の停止額試算
4.退職・再雇用の設計整理
5.将来の受取額シミュレーション
制度を正しく理解すれば、「必要以上に不安になること」も、「知らずに損をすること」も防げます。
定年前後の判断は、数字で決める
65歳は、
-
退職設計
-
再雇用条件
-
老後資金計画
を同時に考える時期です。
ここでの判断が、その後20年以上の資金に影響します。
年金個別相談のご案内
・オンライン対応可
・事前資料確認可
・全国対応
在職老齢年金の停止額は、正確な試算をすれば必ず見えます。
不安なまま進めるのではなく、一度整理してから判断しませんか。
