
「うちは3カ月単位のフレックス制だから、残業は最後にまとめて調整すればOKでしょ?」
──そんなふうに思っていませんか?
実は、この考え方には大きな落とし穴があります。
特に「休日労働が増えた場合」や「最終月に勤務が集中する場合」は、想定外の残業代負担が発生する恐れがあるのです。
フレックスタイム制でも「1カ月ごとの上限」は守らなければならない
3カ月単位のフレックスタイム制を導入していても、労働基準法36条に基づく時間外労働の上限規制は1カ月単位で適用されます。
つまり――
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各月ごとに、週平均50時間を超えた分が時間外労働としてカウントされます。
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「3カ月まとめて清算するから今月は多くてもOK」という考え方は通用しません。
さらに、3カ月の最終月では、**総労働時間の超過分(隠れ残業)**をまとめて精算する必要があり、
ここで特別条項を発動するケースが多くなります。
「隠れ残業」が生まれる仕組み
フレックス制では、1週平均40時間を超えて50時間までは一見「合法的な範囲」に見えます。
しかし、最終的には3カ月トータルで週平均40時間を超える部分を計算しなければならず、結果的に第3月(清算月)にしわ寄せが起きやすくなります。
特別条項の発動条件と注意点
3カ月単位フレックス制で36協定を結ぶ際には、次の点を押さえておきましょう。
項目 | 内容 |
1カ月の時間外上限 | 原則45時間(休日労働を除く) |
特別条項の上限 | 100時間未満(休日労働を含む) |
2~6カ月平均 | 80時間以内に収める必要あり |
つまり、第1月・第2月で休日労働が多い場合、最終月の時間外+休日労働が80時間を超えないよう注意しなければなりません。
休日労働が増えた場合もルールは同じ
「急な案件で休日出勤が増えた」
「月末に作業が集中してしまった」
──こうした場合でも、清算期間内であっても上限規制は変わりません。
休日労働が増えれば、その分**総枠(100時間未満)**に近づくため、予想外のペナルティや未払い残業リスクにつながることがあります。
フレックス制こそ「最終月の管理」が命
フレックスタイム制は、柔軟な働き方を実現できる反面、最終月の労働時間管理を誤ると一気に違法残業となるリスクがあります。
特に3カ月単位で運用している場合は、
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毎月の労働時間の進捗を見える化する
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休日労働を含めた累積時間をチェックする
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特別条項を安易に発動しない
といった管理が欠かせません。
フレックスタイム制は「導入して終わり」ではなく、日々の運用と労働時間管理の仕組みづくりがカギになります。
「うちはルールどおり運用できているか?」
「特別条項を正しく設定しているか?」
と不安を感じる場合は、ぜひ一度ご相談ください。