
最近、スーパーや小売業を中心に「スポットワーカー(単発労働者)」を活用するケースが増えています。
必要なときに必要な人数を確保できる便利な仕組みですが、労務管理の観点では落とし穴があります。
事例:教育をしていなかったスポットワーカーが労災に
あるスーパーでは、1日だけの契約で働いたスポットワーカーが商品補充中にカゴ車で転倒し、全治3カ月の大けがを負いました。
人事担当者は「パートには教育していたけど、スポットワーカーにまでは時間を割けない…」と考えていましたが、これは法律違反に当たります。
法律は「1日だけだから免除」とはしていない
労働安全衛生法第59条により、労働者を雇い入れたときは必ず安全衛生教育を行う義務があります。
雇用が1日でも、単発契約でも、例外はありません。
教育内容は以下のような基本事項を含みます。
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作業の安全手順
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使用する機械や道具の取り扱い方法
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転倒や事故を防ぐための注意点
特にスーパーでは転倒事故やカゴ車による事故が多発しており、教育の徹底は欠かせません。
教育を怠るとどうなる?
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50万円以下の罰金(安衛法第120条)
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事故が起きた場合、労基署への報告義務
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初日から3日間は会社が休業補償を負担(平均賃金の60%)
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被災労働者からの損害賠償請求リスク
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さらに、常時50人以上の労働者がいる場合は安全管理者の選任義務まで調査対象になることも
つまり、「短期だから教育不要」という判断は大きなリスクを抱えることになるのです。

実務でのポイント
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スポットワーカーでも雇入れ直後に簡潔に教育を行う
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所定労働時間内で実施するのが原則
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教育内容は業務に応じて重点を絞り、現場で分かりやすく伝える
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事故後ではなく「雇用前に仕組みづくり」をしておくことが重要
まとめ
スポットワーカーは柔軟な人材活用として注目されていますが、安全教育を怠れば企業側が大きなリスクを背負うことになります。
「1日だけだから」と軽く考えず、雇入れ時教育を必ず実施し、労災防止と法令順守を徹底しましょう。
森事務所では、スポットワークを含む労務管理や安全衛生体制づくりについてもサポートしています。
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