
1. スポットワークとは?
「スポットワーク」とは、短時間かつ単発の仕事をアプリなどで仲介され、働くスタイルのことを指します。
働く人にとっては空き時間で働け、企業にとっては急な人手不足に対応できるなど、利便性が高く注目度が高まっています。
一方で、賃金の未払い、求人内容と実際の条件が異なるといったトラブルも報告されています。
そのため、厚生労働省は2025年7月4日にリーフレットを作成し、労使双方への適切な労務管理を促しています
2. 応募した時点で契約成立―8月以降は企業側の対応に注意を
厚労省によると、スポットワークでは面接などを経ず、アプリ上で応募が完了した時点で労働契約が成立すると一般的に考えられます。
これを踏まえ、2025年9月1日以降の業界ルールとして、スポットワーク協会では「応募完了による解約権留保付労働契約」を原則とし、使用者(企業)による契約後の解約を制限する運用がスタートします。
3. 企業側が解約できる例外とは?
企業が就労開始直前に解約したい場合、下記のような合理的な理由が必要とされます:
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天災や不可抗力による中止(地震・台風など)
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労働者本人の病気や資格不足、法令違反の疑い
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勤務態度や経験など募集条件を満たさない場合
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持ち物の不備など、労働者側に要因があるとき
これらは、就労開始24時間前以前・以降により、該当理由が異なります。
4. 解約できない場合は「休業手当」が発生
契約成立後、企業都合で業務を中止・休業させる場合は、労働基準法第26条に基づき、休業手当を支払う義務があります。
さらに、実際の就労時間が予定と異なる場合には、速やかに確認して確定した時間に基づいて正しく賃金を支払うことも求められます。
5. 経営者・個人事業主の皆様へ:準備と対応のポイント
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応募=契約成立を前提に、求人時から解約条件を明確に記載する
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就業条件や持ち物についての確認を徹底することでトラブル防止
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予定外の就業時間修正には柔軟に対応し、正当な賃金支払いを行う
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契約後の休業や中止時には休業手当の支払い義務があることを認識
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スポットワーク協会や業界ガイドラインに沿った利用規約の整備を行う
図表① スポットワーク新ルールの概要(2025年9月〜)
項目 |
内容 |
根拠・出典 |
契約成立時期 |
求人への応募が完了した時点で「労働契約成立」 |
厚生労働省リーフレット(2025年7月4日公表) |
契約形態 |
解約権留保付労働契約(合理的な解約条件を事前に設定) |
労働契約法第3条第1項 |
労働者の解約 |
原則いつでも可能(直前キャンセルはペナルティの可能性) |
スポットワーク協会運用方針 |
企業の解約(24時間前以前) |
天災等不可抗力、募集人数変更、掲載ミスなど |
スポットワーク協会運用方針 |
企業の解約(24時間前以降) |
天災等不可抗力、労働者の病気・資格不足、条件未達、持ち物不備など |
スポットワーク協会運用方針 |
解約不可の場合 |
労基法第26条に基づく休業手当支払い義務(平均賃金の60%以上) |
労働基準法第26条 |
図表② 企業側の解約可否早見表
タイミング |
解約可能な主な事由 |
解約不可の場合の対応 |
就労開始24時間前まで |
①天災等不可抗力 ②営業中止(天災以外) ③仕事量変化による人数変更 ④求人掲載ミス ⑤労働者側の条件未達・資格不足 |
休業手当の支払い |
就労開始24時間前以降 |
①天災等不可抗力 ②労働者の病気・長期療養 ③資格不足・法令違反 ④条件未達・経験不足 ⑤持ち物不備 |
休業手当の支払い |
チェックリスト:経営者・個人事業主が確認すべきポイント
求人掲載前に
□ 応募=契約成立であることを理解している
□ 解約条件を合理的かつ明確に設定している
□ 勤務日時・場所・仕事内容・持ち物を具体的に記載
契約成立後に
□ 労働者の条件や資格を事前に確認している
□ 急なキャンセル理由がルールに沿っているか確認
□ 解約不可の場合、休業手当の支払い義務を把握している
就労後に
□ 実際の労働時間を正確に確認している
□ 予定外の時間が発生した場合、賃金を修正して支払っている
□ ハラスメント防止策や相談窓口を周知している
まとめ
2025年9月より、スポットワークでは「応募=契約成立」が原則となります。
企業側は直前の解約に関し、合理的な理由がない限り制限され、違反すると休業手当の支払い義務が生じる点に注意が必要です。
経営者や個人事業主の方は、早めの対応と契約の明確化を進め、法令遵守とトラブル防止を両立させましょう。
参照先:厚生労働省 いわゆる「スポットワーク」における留意事項等をとりまとめたリーフレットを作成し、関係団体にその周知等を要請しました。