
こんにちは。社会保険労務士の森です。
6月~7月にかけて行う「労働保険の年度更新」。
これは、会社で働いている“労働者”の賃金をもとに、労働保険料を計算して申告・納付する大切な手続きです。
でも実際には…
「うちは家族でやってるけど、親も対象になるの?」
「うちの取締役って保険に入れるの?」
「出向してきた人はどうすれば?」
といった疑問がとても多いんです。
今回は、中小企業・家族経営の方にもわかりやすいように、対象になる人・ならない人を具体例とともに解説します!
労働保険って?
労働保険とは、次の2つの保険をまとめた言葉です。
🔹 労災保険:仕事中や通勤中のケガや病気に備える保険
🔹 雇用保険:失業時や育児休業中に給付が受けられる保険
この2つでは、「保険の対象になる人の基準」が異なるので注意が必要です。
労災保険と雇用保険の違いと対象者
🔷 労災保険の対象者
「会社の指示で働き、賃金をもらっている人」は原則すべて対象です。
正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣社員なども含まれます。
🔷 雇用保険の対象者
以下の条件を満たす人が対象です。
-
1週間の所定労働時間が20時間以上
-
31日以上の雇用見込みがある
保険の種類 | 加入のポイント | 対象になる人 |
労災保険 | 実際に働いている人かどうか(労働者性) | 社員・パート・アルバイト・派遣社員など |
雇用保険 | 所定労働時間が週20時間以上+31日以上の見込み | 上記に該当する人(一定の条件あり) |
✅よくあるケース別に解説!
● 同居の家族は対象になる?
原則として、事業主と同居している家族は対象外です。
なぜなら「手伝い」であって、労働契約がないとみなされるからです。
でも、以下のような条件を満たせば、労働者として認められることもあります。
🔸 他に従業員がいる
🔸 タイムカードや賃金台帳など、就業の実態がある
🔸 給与が労働の対価として支払われている
➡ たとえば、「他にパートさんがいて、お母さんがレジ担当として勤務時間を記録している」ような場合は、対象になる可能性があります。
取締役は保険に入れるの?
取締役でも、実際に社員と同じように働いている場合は、保険の対象になる可能性があります。
👥 具体例: 取締役は対象になるの?
-
代表取締役など業務執行権がある人 → 基本的に❌対象外です。
-
業務執行権がない取締役で、社員と同じように勤務している人 → ✅労働者として認められる可能性があります。
たとえば、9時~17時で働き、他の役員の指示で業務を行い、給与が労働の対価として支払われているなら、保険対象となるケースがあります。
取締役の種類 | 労災保険 | 雇用保険 | 解説 |
代表取締役など業務執行あり | ❌ | ❌ | 指揮命令を受ける立場でないため対象外 |
業務執行権のない取締役で、社員のように働いている場合 | ✅ | ✅ | 労働実態があり、給与も労務の対価であれば対象 |
派遣社員・出向社員はどうなるの❓
▶ 派遣社員
労災保険 → 派遣先で加入(働いている場所)
雇用保険 → 派遣元で加入(雇用契約している会社)
▶ 出向社員
出向には2種類あります。それによって保険の手続き先が異なります。
出向の種類 | 労災保険 | 雇用保険 | ポイント |
在籍出向(元の会社に在籍し、別の会社で働く) | ✅ 出向先で加入 | ✅ ※ | 賃金支払元と就労場所で分かれる |
転籍出向(出向先に完全移籍) | ✅ 出向先で加入 | ✅ 出向先で加入 | 出向元との関係は終了している |
※出向元と出向先の両方から給料をもらっている人は➡ 生活の柱になっている給料をくれる会社で雇用保険に入ります。
まとめ:迷ったら“実態”が重要!
ケース | 労災保険 | 雇用保険 |
正社員 | ✅ | ✅ |
パート(週20時間以上) | ✅ | ✅ |
同居の家族(手伝いのみ) | ❌ | ❌ |
同居の家族(業務実態あり+他の従業員もいる) | ✅ | ✅ |
代表取締役 | ❌ | ❌ |
非業務執行の取締役で労働実態あり | ✅ | ✅ |
派遣社員 | ✅(派遣先) | ✅(派遣元) |
出向社員(在籍出向) | ✅(出向先) | ✅ ※ |
出向社員(転籍出向) | ✅(出向先) | ✅(出向先) |
※出向元と出向先の両方から給料をもらっている人は➡ 生活の柱になっている給料をくれる会社で雇用保険に入ります。
📩 お困りの方はご相談ください!
「この人は年度更新の対象になるの?」
「雇用保険は入っておいたほうがいい?」
そんな疑問があれば、お気軽に当事務所へご相談ください。
わかりにくい労務のことを、やさしく・しっかりサポートいたします!