
介護や福祉の現場で働く皆さんにとって、腰痛は身近な問題です。
実際、保健衛生業界における労災のうち、**腰痛の発生件数は43.2%**を占めるほど深刻な状況です。
今回は、社会福祉施設における腰痛対策について、誰でも分かりやすく解説します。
腰痛が起こる原因とは?
腰痛が発生する主な要因は以下の4つです。
-
動作要因:前屈みや無理な姿勢での作業
-
環境要因:作業スペースの整理整頓不足や照明・温度の問題
-
個人的要因:加齢や筋力不足
-
心理・社会的要因:人手不足による焦りや急ぎ作業
このように、腰痛は複数の要因が絡み合って発生します。
さらに、腰痛が悪化すると長期の休業を余儀なくされることもあり、結果として職場の人手不足が加速し、さらなる労災リスクにつながる可能性があります。
厚生労働省が推奨する4つの腰痛対策
厚生労働省の**「職場における腰痛予防対策指針」**(2013年)では、以下の4つの対策を総合的に実施することが求められています。
-
作業管理
-
前屈みや中腰での作業を避ける
-
同じ姿勢を長時間続けない
-
重い物の持ち運びは複数人で行う
-
-
作業環境管理
-
作業スペースの整理整頓
-
明るさや温度に配慮(寒さは腰痛の悪化要因)
-
-
健康管理
-
腰に負担のかかる作業をする従業員には6カ月ごとの健康診断を実施
-
腰痛予防体操を取り入れる
-
-
予防教育
-
腰痛の原因や対策についての研修を行う
-
労働者の経験に応じた教育を実施
-
実際の介護施設での成功事例
ある小規模の通所介護事業所では、業界未経験者の早期離職が問題となっていました。
特に腰痛による離職が多く、人手不足が悪化する悪循環に陥っていました。
そこで、この施設では以下の対策を実施しました。
-
利用者と職員の管理を細かく行う
-
その日の利用者の体格(大柄・小柄)や支援内容(入浴・トイレ介助の有無)をリストアップ
-
職員の経験値(初心者・ベテラン)や体格を把握
-
-
負担の平準化を図る
-
ベテランにばかり負担が偏らないように調整
-
初心者や女性が一人で重労働をしないようにフォロー体制を整備
-
体格の大きな利用者の介助は複数人で行う
-
この取り組みによって、腰痛の発生が減少し、職員の定着率が向上しました。
まとめ:腰痛対策は職場の安定につながる
腰痛は、死亡災害にはつながりにくいため軽視されがちですが、長期の休業や離職を引き起こし、結果として職場全体の負担が増す原因になります。
そのため、
-
作業方法の見直し(姿勢の改善・複数人作業)
-
作業環境の整備(明るさや温度管理)
-
定期的な健康診断と体操の導入
-
職員ごとの負担を調整する仕組みづくり
といった対策を継続的に行うことが重要です。
腰痛を予防することは、職員の健康を守るだけでなく、職場の安定化にもつながります。
これを機に、あなたの職場でも腰痛対策を見直してみませんか?